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放送ウーマン賞は、ドラマなど作品に差し上げるのではなく毎年、放送界で活躍し優れた功績をあげられた女性にエールを贈るという意味で差し上げています。
まず、SJの会員と有識者から、候補となる方を推薦して頂きます。そして、SJの歴代会長と現役員で構成する放送ウーマン賞選考委員会を昨年12月26日に第1回を開催し、13人(組)から5人(組)に絞りました。今年1月11日に第2回を開催し、今回のおふたりに決定しました。
おふたりを選んだ理由は、ドラマが一般的に不振と言われる時代に視聴率も好調で老若男女に受け、話題となったドラマを作った功績はもちろんですが、NHKやテレビ朝日のように大きな組織の中で、連続ドラマのように大勢のスタッフを率いていきながら、ちゃんと実績も出したというところに、40代の脂の乗った女性プロデューサーが活躍しているのを、大変嬉しく思うと同時に、心から応援したいと思ったからです。今後もますますのご活躍を祈念し、共感できるドラマを沢山見たいなと期待しております。おめでとうございました。
(放送ウーマン賞2012選考委員長 柳田祐子)
放送ウーマン賞2012 受賞者
NHKチーフプロデューサー
岩谷 可奈子(いわたに かなこ)さん
1964年、東京都生まれ。1986年、東京大学卒業、NHK入局。番組制作局ドラマ部に配属。朝ドラなどの助監督を経て2年後、松江局へ転勤。地域局のディレクター業務を行って1991年に東京のドラマ部に戻る。再び助監督やオーディオドラマの制作演出、外部制作会社制作のNHKドラマのプロデューサー、大河ドラマのデスクなどを経て、2004年からチーフプロデューサー。
2004年 | 特集ドラマ「輝く湖にて」 |
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2005年 | NHKスペシャル「あなたは人を裁けますか」 |
2006年 | 土曜ドラマ「繋がれた明日」 「魂萌え!」 |
2007年 | 木曜時代劇「柳生十兵衛七番勝負~最後の闘い」 |
2008年 | 土曜ドラマ「トップセールス」 |
2010年 | 大河ドラマ「龍馬伝」 |
2012年 | 連続テレビ小説「梅ちゃん先生」 |
贈賞理由
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1961年にスタートしてから50年以上の歴史がある“朝ドラ”のプロデューサーを、入局26年目にして念願かなって務められることになりましたが、東日本大震災が起きて、企画を一から練り直して生まれたのが「梅ちゃん先生」でした。戦後、焼け野原となった東京蒲田に住むヒロインが、家族や友達、近所の人たちとの絆の中で悩みながらも成長していく姿に多くの視聴者が共感し、“朝ドラ”としては9年ぶりの平均世帯視聴率20%超えとなりました。当時ドラマの現場では珍しかった出産、育児休職を経て、復帰後は大河ドラマ「龍馬伝」や土曜ドラマなど様々なドラマを制作しながらキャリアを積み、満を持して“朝ドラ”プロデューサーに挑戦し結果も出したことは、後輩の女性たちにも希望を与えることでしょう。ベテランプロデューサーに敬意を表し、放送ウーマン賞2012を贈ります。
受賞者挨拶
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「梅ちゃん先生」は、私のこれまでのNHKドラマ人生で感じてきたことを全てつぎ込んで、何とか看板番組としてヒットさせたいと思った番組です。結果的に現在のテレビドラマとしては破格の視聴率をいただくことができ、その要因を質問される日々が今でも続いています。自分ではよくわかりませんが、班員たちに言わせるとそれは、男である自分たちには理解できない、岩谷の「言葉にできない女性感覚」なのだそうです。結婚し出産し育児をし、家事をする主婦が、毎朝テレビで見たいものをドラマにする。自分が見たくないものはやらない。そんな身も蓋もない単純明快な論理を貫けたのは、私自身がそんな生活もしながら制作者としての激しい生活をなんとか送ってこられたおかげでしょう。問題をおこしつつも大病もせず成長してくれた子供たちに感謝します。
「龍馬伝」と「梅ちゃん先生」・・・この両極端な番組を見ると私自身のアイデンティティーはあるのか?と疑いたくなりますが、「視聴者目線を忘れない」というのが自分の全ての番組に共通するモットーなので、これからも精進してみなさんに愛されるドラマを作っていきたいと思います。今回はありがとうございました。
放送ウーマン賞2012 受賞者
テレビ朝日ゼネラルプロデューサー
内山 聖子(うちやま さとこ)さん
1965年福岡県生まれ。88年津田塾大学卒業。テレビ朝日入社。秘書室から93年制作現場へ。95年からドラマプロデューサーとして連続ドラマ、スペシャルドラマを多く手掛ける。現在はゼネラルプロデューサー。
1997年 | 連続ドラマ「ガラスの仮面」 |
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2000年 | 連続ドラマ「つぐみへ…」 |
2004年 | 連続ドラマ「黒革の手帖」ATP賞最優秀賞 スペシャルドラマ「それからの日々」放送文化基金賞 |
2007年 | 連続ドラマ「交渉人」 |
2009年 | 連続ドラマ「必殺仕事人2009」 |
2010年 | 連続ドラマ「ナサケの女~国税局査察官」 |
2012年 | 連続ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子」 |
(1) | エランドール賞・プロデューサー奨励賞 |
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(2) | 日経エンタテイメント ベストクリエイター賞・準グランプリ |
贈賞理由
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ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子」では、民放ドラマ年間最高視聴率24.4%を記録。時代を代表するヒットメーカーとして知られる内山さんですが、1990年代、テレビ朝日で初の女性プロデューサーになった当時は、「男なら楽なのに」と思ったことも何度もあったと伺っています。その中で、「ガラスの仮面」「氷点」などヒット作を連発。特に「黒革の手帖」「交渉人」など米倉涼子さんとタッグを組んだ一連の作品は、過酷な職場で生きる女性の姿をリアルに描き多くの視聴者の支持を得ました。こうして、内山さんが道を切り開いて下さったからこそ、今、女性たちがドラマの世界で大きく活躍できる時代がやってきたともいえるのではないでしょうか。「しなやかに」「したたかに」話題作を作り続けてきたプロデューサーに、放送ウーマン賞2012を贈ります。
受賞者挨拶
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素晴らしい先輩女性たちの仲間に入れていただいて光栄です。ありがとうございます。今でこそドラマの現場は女性が活躍していますが、私がプロデューサーになった時は、スタッフは男性ばかりでした。上司に「大変だなあ。女子は男の倍働いて、半分しか評価されない」と言われたので、「だったら4倍働きます。それなら同じですよね」と笑ったら、すぐにチャンスをくれました。それから、自分の言葉に責任をとれるよう夢中でドラマを創ってきました。ドラマ創りには実感が大切です。舞台や職業が何であれ、時代に自分が感じることをテーマにする。そしてキャラクターに反映させる。フィクションであっても、社会や日常の、そこに存在する心の中継だと思って創っています。そして必ず本音で創る。「ドクターX~外科医・大門未知子」はその実感が、視聴者と重なり、大変な反響をいただきました。男社会、縦社会の中で「NOと言える女」を米倉涼子さんが説得力を持って生きてくれました。「私、失敗しないので」という中園ミホさんの名ぜりふは、「命の前で失敗なんかできない」という覚悟が武器になっています。彼女たちと本音でセッションして、ひとつの作品を創ることが出来たことを誇りに思い、この賞に恥じないよう、これからも必死に本音を吐き続けたいと思います。