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「日本女性放送者懇談会(SJWRT)」では、毎年、放送界で活躍し優れた功績をあげられた女性の皆さまへ激励の意味を込めて『放送ウーマン賞』をお贈りしています。
今年度も皆様方にご協力いただき、2回の選考委員会を経て、株式会社毎日放送の斉加尚代さん、日本放送協会の長嶋愛さんのお二人に決定しました。
(放送ウーマン賞2018選考委員長 大原つばき)
放送ウーマン賞2018 受賞者
株式会社毎日放送 報道局
斉加 尚代(さいか ひさよ)さん
1965年生まれ。早稲田大学卒業後、1987年毎日放送入社。報道記者などを経て2015年からドキュメンタリー担当ディレクターに。『映像’15 なぜペンをとるのか~沖縄の新聞記者たち』(2015年9月)で第59回日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞、『映像’17 沖縄さまよう木霊~基地反対運動の素顔』(2017年1月)で平成29年民間放送連盟賞テレビ報道部門優秀賞、第37回「地方の時代」映像祭優秀賞、第72回文化庁芸術祭優秀賞などを受賞。『映像’17 教育と愛国~教科書でいま何が起きているのか~』(2017年7月)で第55回ギャラクシー賞テレビ部門大賞、第38回「地方の時代」映像祭優秀賞。『映像’18 バッシング~その発信源の背後に何が』でギャラクシー賞2018年12月度月間賞。共著に『フェイクと憎悪 歪むメディアと民主主義』(大月書店)。
贈賞理由
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フェイクニュースという言葉が一般化する中、事実を積みかさねて検証することが、ますます大切になっています。斉加さんは毎日放送の「映像」枠を中心に、平成29年度文化庁芸術祭賞優秀賞番組『沖縄 さまよう木霊~基地反対運動の素顔~』をはじめ、長年にわたり優れたドキュメンタリー番組を連打。第55回ギャラクシー賞テレビ部門大賞や第38回地方の時代優秀賞にも輝いた『教育と愛国~教科書でいま何が起きているのか~』は、多層な取材にもとづく事実と関係者へのインタビューを核に、冷静にかつひるむことなく学校教育の現場をみつめています。誰にでもわかりやすく「構えない」斉加さんの表現方法は、気さくに交流を続けてきたネットワークの広さが土台になっているのかもしれません。放送人としての限りないリスペクトを込めて、「放送ウーマン賞」をお贈りします。
受賞者挨拶
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「記者になって10年たたないとドキュメンタリーはつくれないと言われて、10年もつだろうかと不安に思ったことを昨日のように思い出します。今年で報道の現場に立つようになって30年になりますが、ドキュメンタリー制作の原点となったのは、沖縄の新聞社を密着取材した際に出会った次の言葉です。『沖縄の新聞記者は、先輩たちから取材を学ぶのではない。沖縄戦でつらい想いをした人たちから取材を学ぶのだ。沖縄の新聞社は、沖縄の歴史を忘れてはいけない。』以来、取材させていただいている相手の方から学び、支えられていることをあらためて感じながら、制作し続けてきました。
今、時に歴史を軽んじる動きがある中で、放送に何ができるかと考えたとき、歴史や事実を丁寧に伝えて、視聴者が暮らしの中で判断を誤らないように促す力が放送にはあるのではないかと思っています。これからも事実と歴史を大事にした番組づくりを続けていきたいです。」
ゲストのスピーチの中で、「心配りが細やかで笑顔が素敵な斉加さんは『可愛らしいウサギ』なのか、攻撃的な相手に対しても決してひるむことのない『猛毒を持つ蛇』なのか…」というコメントがあり、会場の笑いを誘っていました。
放送ウーマン賞2018 受賞者
日本放送協会 制作局
長嶋 愛(ながしま あい)さん
NHKディレクター。聴覚障害があり、音声情報を文字にする通訳者とともに番組制作を行う。2003年入局。奈良放送局、青少年教育番組部を経て、2014年から文化福祉番組部配属。これまでに『みんな生きている』『青春リアル』『エデュカチオ!』『ろうを生きる難聴を生きる』『ハートネットTV』『世界はほしいモノにあふれてる』などを担当。2018年放送の『ETV特集 静かで、にぎやかな世界~手話で生きる子どもたち~』が 平成30年度文化庁芸術祭テレビ・ドキュメンタリー部門で大賞を受賞。
贈賞理由
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幼いころからつけていた補聴器があれば配慮は不要と思っていた長嶋さん、入局5年目には音声だけの会話が困難になり、音声情報を文字にする通訳者とともに番組制作を続けています。
昨春に制作した『ETV特集 静かで、にぎやかな世界~手話で生きる子どもたち~』は、おしゃべりな手話で話す子どもたちのキラキラした表情と若者の人生を切り開く力強さをさわやかに描き、私たちを圧倒しました。「ろうである自分が好き」と話す子どもたちは、ありのままの自分大切に成長しています。そこには真のダイバーシティが見えます。これからも、長嶋さんだからこそ描ける世界を見せてくださることを期待し、心からのエールを込めて、「放送ウーマン賞」をお贈りします。
受賞者挨拶
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「10年前、取材もできず〝窓際社員″のような時に、聾学校で子どもたちに『耳が聴こえなくてもテレビ局で働けるんだね』と紹介されました。その時、心の中では『聴こえる人にならないとディレクターになれないんだよ』と思っていましたが、正直に言えませんでした。自分が何とかしなければ変わらない、新しい道を作りたいと思い、ディレクターをやりたいと言い続けてきました。今、聴こえないままの自分が自由に番組をつくることができて、本当に幸せです。
今回のETV特集は、『共に生きる』とはどういうことか、を考えてもらいたくて制作した番組ですが、聴こえない自分と聴こえる制作チームが一緒になって制作したからこその受賞だと思います。この受賞をきっかけに、こういうディレクターがいる、ということを広く知ってもらい、次の人たちにつながっていけばいいと思います。」
会場では、2020東京パラリンピックが近づいている中で、多様な働く環境の中で多様な視点からうまれる企画が面白いと思える社会になることが必要ではないか、長嶋さんには、その新しい社会のあり方に向かって、これからも大きなメッセージを発信してくれることを期待する、という声が聞かれました。